01 — 倉庫
山あいにある、園芸倉庫。10年以上、誰にも使われていなかった。高い天井、コンクリートの床、何年も手つかずの道具置き場。多くの人は、役目を終えた建物だと思っただろう。私たちは、器を見た。
この倉庫と出会ったのは2021年の秋。改修のアイデアはそこから始まった。「理想のジム」の図面を引くところからではなく、ひとつの問いかけから——この空間は、何になりたがっているのか。

山あいにある、園芸倉庫。10年以上、誰にも使われていなかった。高い天井、コンクリートの床、何年も手つかずの道具置き場。多くの人は、役目を終えた建物だと思っただろう。私たちは、器を見た。
この倉庫と出会ったのは2021年の秋。改修のアイデアはそこから始まった。「理想のジム」の図面を引くところからではなく、ひとつの問いかけから——この空間は、何になりたがっているのか。
のまのまは、アウトドア写真とドキュメンタリー映像のスタジオ、Studio AKARIから生まれたプロジェクト。AKARIがずっと追いかけてきたのは、自然と、そのそばで暮らす人たち。のまのまは、その想いが「場所」を求めたときに生まれた——からだを動かすこと と人のつながりが根づく、物理的な空間。
のまのまという名前は、倉庫がある地区「本野間(ほんのま)」から。その中に「間」がある。人と人のあいだ。セットとセットのあいだ。意図せず生まれる会話のあいだ。
2025年12月、改修が始まった。レセプションの木材は、この倉庫に何年も眠っていたもの。窓もそう。新しい素材を外から持ち込むのではなく、すでにここにあるものと、神山に根ざした職人たちと一緒につくった。
隣の香川県から来た若い大工兄弟、野遊と土歩がこの場をつくりあげた。彼らの仕事は、ただの建築ではない。木を削る手が、その木が育った森を知っている——そういうものづくり。
のまのまの原則はシンプル。ここにあるものから始める。いいものは、どこから届くのではなく、すでにこの場所にある。
1,600個の穴。ボルダリングウォールにホールドを取り付けるために、合板に開けた穴の数。1ヶ月かかった。
壁は3面——90°、110°、120°。プロのルートセッター、小柴琢人がセットしている。一本一本の課題は、物語のようにできている。引き込まれる出だし、試される核心、そして頂点での解決。30本以上の課題がこの壁に生きている。そしてこれからも変わり続ける——いい壁は、完成しない。
2026年初頭、改修が完了した。5月のオープンを前に、神山の仲間たちが壁を登りに来てくれた。何年も岩を触ってきた人もいれば、ホールドに手をかけるのが初めての人もいた。落ちて、笑って、もう一回。そのあいだに、誰も意図しない会話が生まれていた。
ただの箱が、器に変わった瞬間だった。
のまのまは、完成していない。完成させるつもりもない。余白——意図的に残された空白——がこの空間の設計に組み込まれている。のまのまは、使う人たちと一緒に育っていく。この先どうなるかは、私たちだけでは決められない。
まだ未完成。もう、ここが居場所。